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咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)ーむし歯でもないのに歯が痛む

2019年2月17日

寝起きに歯が痛み、抜歯と言われました

patient3
三か月ほど前に左上の奥歯が寝起きにびっくりするほど痛み、その後も痛みが続くので歯科医院を受診しました。
むし歯ではなく歯周病で、かみ合わせが悪いため上下とも抜歯と言われました。

 

三ヶ月間、痛みが止まらないとのこと、さぞかし辛いだろうと思います。
歯周病ではそのような痛み方は稀なので、痛みの原因をほかで探した方がよさそうです。
konishi

 

patient3
朝方、歯だけでなく舌までも痛くて目が覚めてしまいます。
特に寝起きの痛みが続き痛みで熟睡できていません。
左上下の全体が痛み、左上の歯は動揺しているようで、起きている時も痛みます。
歯ぎしり癖、噛みしめ癖もあります。

 

痛みの原因は歯周病というより、力の要素が大きいのではないかと思います。
寝ているときの噛みしめや歯ぎしりが大きな要因になっている咬合性外傷の可能性が高そうです。
konishi

 

konishi
咬合性外傷の対策としては
1.寝る前にリラックスして、歯ぎしりや噛みしめは歯の痛みになるので決してしないように、と自分に言い聞かせてください。(暗示療法)
2.起きているときに上下の歯が接触しないように気をつけてください。(TCH:歯牙接触癖)
歯ぎしり、噛みしめの改善が最大の課題です。
そのためには、昼間歯を接触させないような習慣をつける歯牙接触癖の改善がとても重要になります。
大変だとは思いますが、ご自分で治せることですので、ぜひ頑張ってトライしてみてください。

 

むし歯でも歯根破折でもないのに、歯が激しく痛むことがあります。
この痛みの原因として、咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)が考えられます。
咬合性外傷という言葉はあまり聞きなれないことばですが、日常臨床ではしばしば起こりうる歯科疾患です。
ところが、咬合性外傷をあまりよく理解していない歯科医がたくさんいます。

 

咬合性外傷とは

歯に過剰な力がかかることにより歯周組織に引き起こされる傷害を咬合性外傷といいます。

症状

代表的な咬合性外傷の症状として動揺と痛みがあります。

 

X線像

X線写真では歯根膜腔(しこんまくくう)の拡大があるときは咬合性外傷を疑います。

そのほか、歯槽骨梁(しそうこつりょう)の変化、垂直性骨吸収(すいちょくせいこつきゅうしゅう)を認めることもあります。

 

症例

歯根膜腔の拡大(しこんまくくうのかくだい)
X線写真上の歯根と歯槽骨の間の線状の透過像(黒い部分)が太くなってみえることがあります.これを歯根膜腔の拡大といいます.
以前から右下奥歯が揺れて痛むことが 多く、そのたびに歯科医院で抗生剤を処方してもらっていました. 約5か月後のX線写真です.黒い帯が細い線状になっていることが分かります.

症例

垂直性骨吸収(すいちょくせいこつきゅうしゅう)
X線写真で歯の横に三角形の陰影が見える状態を垂直性骨吸収といいます.
歯の挺出により咬合性外傷がおこり歯槽骨が垂直性骨吸収を起こしています. 過剰な力を排除するために下の歯とのあたりを除去することで歯槽骨が改善してきました.

 

治し方

”咬合性外傷”という名前のひびきから何か大変な病気のような感じを与えますが、咬合性外傷の諸症状は力を加えなければほとんど改善してしまいます。

原因である過剰な力を取り除くことさえできれば、歯の動揺や痛みなどの症状は消失し、垂直性骨吸収も改善してきます。

 

痛みや動揺があるとき、過剰な治療にご注意ください

咬合性外傷を引き起こす歯ぎしり咬合性外傷を引き起こす大きな原因は歯ぎしりやかみしめなどの悪習癖です.歯ぎしりやかみしめは主に寝ている間にやってしまうことなので、自分の意志ではコントロールできません.そこで睡眠時の悪習癖を改善するために、歯牙接触癖に注意することをお薦めします.歯牙接触癖は起きているときに、上下の歯を接触させている癖です.昼間、上下の歯が接しているのを意識したら、その場で上下の歯の接触を解くようにします.歯が離れているのが当たり前になり、上下の歯が接していることに違和感をもつようになれれば、睡眠時も無意識のうちに歯を離すようになり、悪習癖が改善されていきます.

咬合性外傷はかなり激しい痛みや動揺を引き起こすことがあります。

咬合性外傷に対する知識の少ない歯科医は、激しい痛みや動揺に驚いて、簡単に神経をとってしまったり、歯を抜いてしまったりします。

信頼できる歯科医を前もって探しておかないと、とらなくても良い神経をとられてしまったり、抜かなくて良い歯を抜かれてしまうことになります。

痛みを訴えて来院した初対面の患者さんに、「これは咬合性外傷だから、少し様子をみましょう」というのは、咬合性外傷を十分理解している歯科医でもなかなか難しいところがあります。

痛みを訴えて歯科医院に行ったのに、何も治療行為をしてくれなければ、腕の悪い歯科医と思われてしまいます。

神経をとってしまえば確実に痛みは止まり、患者さんは激痛から解放されるので、あの先生は腕が良いと感謝されるからです。

 

関連図書

【歯科治療の新常識】 現代的疾患 咬合性外傷 P13~P35


歯周病の新常識
小西昭彦
阿部出版
歯科治療の新常識
小西昭彦
阿部出版

小西歯科医院のホームページ

 

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