こに歯学|歯科の記事

「抜かないと隣の歯に菌がうつってしまう」というウソ

投稿日:2019年5月19日 更新日:

抜歯の理由としてよく言われているのが、

『歯周病の歯は歯周病菌がうつって、隣の歯に悪影響を与えてしまうから早く抜かないといけない』

というものです.

しかし、隣の歯に歯周病菌がうつることはありません.

臨床的にはうつらないと言える

もし、歯周病菌が隣の歯にうつるとすれば、重度歯周病で抜け落ちてしまうような歯の隣の歯は、その次に抜け落ちてしまう可能性が高くなるはずです.

しかし、歯周病で自然に抜けてしまった歯の隣の歯がその次に抜け落ちるということはまずありません.

歯周病の初発は大臼歯部が多いのですが、たとえば、右の大臼歯の歯周病が進行したとき、次にトラブルをおこすのは左側の大臼歯部であることがほとんどです.

臨床的な観察では、隣の歯にも歯周病がうつるということは考えにくいということが言えると思います.

 

歯周ポケットから健康歯肉溝へ歯周病菌を移せない

歯周病菌として強いエビデンスを有するものとしてクローズアップされているのはPg菌やTf菌、Aa菌などです.

これら歯周病と強い関連があると考えられている細菌は遊離酸素がないところを好む嫌気性菌です.

したがって、歯周ポケットの深いところから隣の歯の歯肉溝に移動することは難しいのではないかと想像できます.

実際に、歯周病原菌が周辺の歯周ポケットにうつれるのかどうかを調べた研究があります.

 

Aa菌をうつせるかどうかの研究

歯周病との関連が高いとされている細菌にAa菌(Actinobacillus actinomycetemcomitans=アクチノバチラス・アクチノミセテムコミタンス)があります.

このAa菌を、若年性歯周炎の患者の病的歯周ポケットから、同一患者の健康歯肉溝に移せるかどうかを確かめた研究があります.

病的なポケットから健康な歯肉溝に移されたAa菌はその部に歯周炎を発症させることなく、3週間以内に完全に排除されてしまったそうです.

つまり意図的に歯周病菌を隣のポケットにうつそうとしても、うつすことはできなかったということになります.

 

菌がうつるのであれば、ポケット診査はできない

プローブ:ポケット診査をする器具

歯周病の検査として日常的に行われているものに歯周ポケットの診査があります.

これは、プローブという器具を使って、歯周ポケットの深さを測ったり、歯周ポケットからの出血がないかを調べるものです.

もし、歯周病菌が隣の歯にもうつるのであれば、歯周病菌のいるポケットの診査をしたプローブには細菌がついているはずですから、一か所ごとにプローブの先端を滅菌する必要がでてきます.

しかし、そのようなことを行っている歯科医はいませんし、それで歯周病菌がほかの歯にうつったという話は聞いたことがありません.

つまり、歯周病菌が隣の歯にうつるという心配はまったくないわけです.

したがって、『歯周病の歯は周りの歯に歯周病菌がうつしてしまうから早く抜かないといけない』という歯科医の言葉には全く根拠がないということになります.

 

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