こに歯学|歯科の記事

歯が割れました、抜かなければいけませんか

2016年9月23日

 

2軒の歯科医院で抜歯と言われました

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左下の奥歯に激痛が走り、かかりつけの歯科医院に行ったところ、歯が割れているので抜歯した方がよいといわれました.

痛みは一週間ほどで治まったので、ネットで抜かないことを標榜している歯科医院に行きましたが、やはり抜歯と言われてしまいました.

 

インプラントを入れたい気配満々
抜歯後の処置についてはかかりつけの歯科医では抜いてインプラントか入れ歯と言われました.

二軒目の歯科医では、このまま放置しておくと大変なことになるから、とにかく抜いてしまって、補綴物のことは後で考えましょうと言われました.

しかし、インプラントを入れたい気配満々の様子でした.

私はインプラントはあまり入れたくありません.

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心配なのは放置しておくと大変なことになると言われたこと
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もちろん抜歯もしたくないのですが、一番心配なのはこのまま放置しておくと大変なことになると言われたことです.

 

抜く必要はありません

konishi
○○さんが抜きたくないのであれば、抜く必要はありません.
またこのまま放置しておいても大変なことになることはありません.
ただ、どのような治療法が一番合っているかは、口の中を拝見しないと分からないと分かりません.

 

第二大臼歯の根尖までの頬舌的(横割れ)な歯根破折

X線写真を撮ってみると、左下のその歯は二本ある歯根のうち奥の方の根(遠心根・えんしんこん)が根尖まで割れていました.

歯の根が割れてしまうことを「歯根破折」と言います。

一旦、歯根破折を起こしてしまった歯を元のようにくっつけることは、難しくなります。

二軒の歯科医院とも抜歯を勧めたようですが、抜歯をするにしても二根のうちの一本だけの破折なので、分割抜歯が適応かと思われます.

健康な近心根(きんしんこん)まで抜いてしまってはもったいないことこの上もありません.

しかし、この二軒とも分割抜歯の提案をしなかった理由は、インプラントの埋入をイメージしていたからです.

インプラントを埋入するのであればそれなりにスペースが必要なので、分割抜去はありえません.一本丸ごと抜いてしまわないと、インプラントを入れるスペースが生み出せないからです.

 

破折部は安定していた

視診では歯肉に膿瘍を形成しているなどの症状は認められず、自覚症状もまったくありません.

X線写真では遠心根周囲に多少の陰影は認められますが、それほど大きな骨吸収は認められません.

しかも割れてしまったことがはっきり確認できる二つの遠心根はかなり離れて存在しているので、この歯根破折は破折を起こしてからずいぶん時間がたっていることが分かります.

つまり、この患者さんの場合、破折がおこったのは3年から5年くらい前ではないかと推察できるので、今さらあわてて抜歯する必要はないわけです.

骨吸収や歯根破折など通常見慣れないX線像をみると、どうしてよいか分からなくなって抜歯ししたくなったり、抜いてインプラントという歯科医の気持ちも分からなくはありません.しかし、たまたま撮影したX線写

真に映った像で破折を見つけたからといって、根拠もなく「大変なことになる」と騒ぎ立てて、抜歯とインプラントを勧める態度は感心しません.

 

私たちがだした結論

患者さんと話し合った結果、私たちが出した結論は、分割抜歯も抜歯もせず、このまましばらく様子をみるというものでした.

歯科医の仕事は歯を削って冠をかぶせたり、歯を抜いてインプラントを入れることではありません.

患者さんの口の健康を守ることです.

私たちは、この患者さんの場合、経過観察をすることが口の健康を守るのに一番よいと判断したわけです.

 

 割れた歯の治療・YouTube

割れた歯の治療

 

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