こに歯学|歯科の記事

歯周ポケットが深くても抜歯しない

2018年6月19日

 

「ポケットが8mm以上あるから抜かなければいけないと言われた」

とおっしゃって相談にみえる方がいらっしゃいます.

定期健診で行った歯科医院でポケット測定をしたところ一か所深いところあったそうです.

痛みや動揺など自覚症状が何もないのに、いきなり抜歯と言われてびっくりしてしまったわけです

歯周ポケットが8mmあるから抜歯と言われた

歯周病が進行すると歯と歯肉がくっついている部分が破壊され歯周ポケットができます.

この破壊を付着の喪失といいます.

付着の喪失が深部に及ぶと歯周ポケットの測定値が深くなっていきます.

通常、歯周ポケットの深さが3mm以上になると付着の喪失がはじまっていると考えられています.

歯周ポケット深さが8mmというのは、かなり歯周病が進行していることになります.

しかし、自覚症状もないのに、ポケットの深さだけで抜歯と決めてしまうのは無謀です.

 

8mmといっても色々な8mmがある

ポケットの値は測定者によってばらつきがあり、測定の日時によっても変わります.

挿入時の圧力や方向によっても測定値はかわってきます.

測定方向は歯軸に平行に入れて行きますが、歯の豊隆具合や生え方によって想定していたような測定ができない場合も多々あります.

プローブを斜めに入れざるを得ない場所もありますし、隣の歯との関係でポケット底まで挿入できない場合もあります.

「歯周ポケットが8mmあった」と言っても、いろいろな状態が考えられます.

8mmという深さはあくまでもひとつの目安です.

それで、抜歯しなければならないということが確定したわけではないので、それだけの判断で抜歯するなどということはゆめゆめなさらぬようにお願いします.

 

歯肉ポケットも考慮する

付着の喪失によって歯周ポケットはできるわけですが、付着の破壊がなくてもポケットができる場合があります.

歯肉が腫れあがっているだけでもポケットができます.

このポケットを歯肉(仮性)ポケットと言います.

歯肉ポケットが深いのはあまり問題になりません.

歯肉炎が治まれば、歯肉ポケットも消失してしまうからです.

 

ポケットの深さは歯肉縁の頂上からの距離を測定するので、歯肉がふくれ上あがっているときはその分だけ深くなります.

したがって、歯肉ポケットと歯周ポケットが混在している場合は、付着の喪失がどの程度なのかを正確につかむことはできません.

場所によって、例えば最後臼歯(一番奥の歯)の奥側などは歯肉の状態が他の場所と異なるので、数値が深くなる傾向があります.

 

あわてて抜歯しないでください

抜歯の判断は、他の診査も十分行ったうえで判断して欲しいと思います.

ポケット深さの数値だけを根拠に抜歯を勧められた場合は即答を避ける方が賢明です.

例え重度の歯周病に罹患していたとしても、8mm、10mmといった深い歯周ポケットが改善する例などいくらでもあるからです.

 

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