歯科医に抜歯と言われても、不安になる必要はありません.
その歯を抜かなくても身体に為害作用が働くことはありませんし、全身に悪影響を与えることもほとんどありません. 歯を抜くと言われたら、なぜ抜かなければいけない状態になってしまったのか、じっくり考えて、これからの口の健康に役立てるようにしてください. |
簡単に抜歯を承諾しない
「歯を抜きます」と歯科医院でいわれたとき、ご自身の症状(痛みが耐えられない、腫れがつらい、動揺が強いなど)に照らし合わせて、抜く必要を感じないときは、簡単に抜歯を承諾しないでください.
まず、その歯が抜かなければならない理由を担当歯科医に聞きましょう. 質問内容は「その歯を抜かなくてはいけない理由を教えてください」ということだけでよいでしょう. その答えが納得できるできるものではないとき、真摯に質問しても満足に答えてくれないようななときは、その歯の抜歯は見合わせましょう. くれぐれも、歯科医の勢いに押されて、”抜かれ”てしまわないようにしてください. |
あわてて抜く必要はありません
一般に、抜歯の対象となるのは重度の歯周病、むし歯が歯肉縁下にまで進行した残根、深部に達した歯根破折などが代表的なものですが、このような状態だからと言ってすぐに歯を抜く必要はまったくありません.
補綴物を早く入れたい歯科医は抜歯を催促しますが、患者さんが必要と思わなければ、慌てて抜く必要はありません. 特に問題となる症状がなければ慌てて抜かずに、生体がどのように応答するのかを見極める時間をとった方がよいと考えています. 生体の自然治癒力は身体を健康に保つように働くので、それがどのように働くのかを知るためには時間が必要です. 重度歯周病の歯では自然に抜けてしまうことがありますが、それならあきらめがつきます. 現代歯科医療では自然脱落してしまう歯を抜け落ちないようにする力はないからです. しかし、歯科医が独断で抜歯と判断した歯であれば、十分保存できる場合がたくさんあります. |
この機会に歯と口のことについて考えてみる
歯医者に「抜く」と言われた歯を放置しておいても、生体に害を与えることはありません.
特に症状がなければ、その歯がどのように応答するのかじっくり経過をみるのがベターです. そして、その間にご自身の歯のこと、口のことについて少し考えましょう. その歯がどうして抜歯といわれてしまうような状態になってしまったのか、その歯とその歯の治療の歴史をできる限り思いだしてください. いつごろどのような症状があったのか、歯科医院には通ったのか、どんな治療をしたのか、歯医者ではどのようなことをいわれたのか、自分はどのように感じて、何をしたのか. できるだけ思い出して文章にしてください. ついでにほかの歯に関しても思いだしてください. 文章にするとそれまで気づかなかったことが見えてきたり、考えがまとまってくることがあります. 歯だけではなく、生活や全身のことについても思い出してくださればなおよいと思います. ご自身の歯や全身のことをじっくり考えて文章にすることが、これからの歯や全身の健康に大きく役立つはずです. |
口の健康を他人任せにしない
抜く、抜かないは自分自身で決定するもし、何も思いだせないとしたら、これまでの歯科治療に関してはほとんど他人(歯科医)任せにして、何も考えていなかったということになります. 今回も今までと同じようにその歯科医のことばをうのみにして、その歯科医の言うとおりに治療を進めれば、今までと同じような状態が続いてしまいます. 「抜く」という歯科医のいうことを受け入れれば、何年か後に次の歯を抜くと言われて再び悩むことになるでしょう. 「抜かない」と歯科医の言うことに従わなければ、「痛い、噛めない」など、抜かなかったことに関する不満が出てくるでしょう. 「この歯を失っても仕方がない、抜いてもらおう」あるいは「多少の苦労はしても抜かずにやってみよう」と、ご自身自ら決定するのでなければ抜いても抜かなくても、将来不満を持つことになってしまいます.
自分の頭で考えるこれを機会にご自分の口の中の状態とじっくり向き合ってください.そして自ら判断を下すようにしてください. ご自分の口と向き合うためにヒントとなるいくばくかの情報は小西歯科医院のホームページにも書いたつもりです. またウェブ上でも有用な記事が見つけられるかもしれません. どうしても分からないことがあれば、メールや手紙でご相談ください. 現在、自分の口はどのような状態なのか、何が問題でどうしたいのか、将来どうなることを望んでいるのか、そのためには何をしなければいけないのか、しっかり考えてください. 来院してくださればさらに詳しい話ができるかもしれませんが、自らの頭で考え抜いてからでないと、来院されてもあまり得るものはないかもしれません. |