メモ
1.インプラントで元のような歯を取り戻せるわけではない
「健康な天然歯のように噛める」インプラントはそれほど多くありません。
2.インプラントのために健康な歯まで抜いてしまう
インプラントの成否は骨の量によって決まってくるので、往々にして抜かなくてもよい歯を抜いてしまうことが多くなります。
3.基本的な歯科治療を忘れている
歯を抜かざるを得なかった原因の除去をおろそかにして、インプラントの埋入ばかり考えていると、問題が先送りにされて次の歯を失う羽目に陥ります。
ダメな歯なんて一本もない
インプラントのために健康な歯を抜いてしまうのは許されない
インプラントのために抜く必要のない健康な歯がいとも簡単に抜歯されているのが現状です.
これは、傷害といってもよい行為で絶対阻止しなければいけないと思います。
一般にホープレスと考えられている歯も抜かないでほしい
歯周病でグラグラの歯、残根の歯、歯根が割れている歯は一般では抜歯もやむを得ないと考えられていますが、私はそう簡単に抜かないでほしいと思っています。
歯周病でグラグラの歯でも、根しか残っていない歯でも、歯根破折の歯でも、それなりに存在意義があるからです。
歯科医の責務はあきらめて抜歯することではない
歯科医療のなんたるか、を私に教えてくれた片山恒夫先生は、「歯無しにならない話」の「抜歯の条件」の項で、「歯科医の責務はあきらめて抜歯の基準を設定することではない」と言っています。
「この歯はダメだ」と決めつけて抜いてしまうのではなく、どんな歯でもできる限りの手当てをして大切にするのが歯科医の務めです。
ましてや、インプラントを入れたいがために、その歯は抜歯と判定するのは歯科医の身勝手というもです。
つまり、実際上あきらめて抜くことはないのだ。
答えはすべて、「その人の歯を救うには・・・・」という発想から、口に出されたものだった。
「抜かねば」などというあきらめの発想は片山さんの辞書にはないのである。
「歯科医の責務は、あきらめて抜く基準を設定することではない。歯を残すために腕を磨くことです」
歯無しにならない話 朝日新聞社 1984
機能回復優先の落とし穴
インプラントを入れるからには、その前に歯を抜いているわけですが、その歯がなぜ抜歯に至ったのかその原因をつきとめて、それに対処しておかないと、また同じようなトラブルを引き起こしてしまいます。
例えば、歯周病で抜歯したのであれば、歯周病を治してからでないと、インプラント周囲炎を発症させてしまいます。
歯根破折であれば、歯を割ってしまうほどの力がどこから来たのかを調べる必要があります。
力に対する対処をきちんとしておかないと、当該の歯を割ってしまった力がほかの歯に働いて、次の歯の破折や歯周炎の組織破壊をもたらすことになってしまいます。
残根状態の歯をインプラントにした時には、口の中にたくさんの冠がかぶっていることが一般的です。
この場合、口の中が補綴物だらけになった理由をよく把握して、これからおこることを予測しておく必要があります。
さもないと、冠が取れるたびにインプラントという悪循環に陥ってしまいます。
インプラントは機械の部品交換ではない
歯がグラグラしているのは、歯が「負担が大きすぎます。なんとかしてください」と悲鳴をあげているということです。
その歯の声をよく聞き、歯を困難な状態から解放するのが歯科治療だと私は思います。
歯がグラつきを通して窮状を訴えているのと歯車が壊れてガタついているとのはまったく違うことです。
歯がグラグラしているのは歯が壊れてしまったからではなく、過剰な力に適応しようとしている生体の反応です。
簡単に取り除いて部品交換をしてもうまくいきません。
グラグラしている原因の除去をして、生体の自然治癒力が働いてくれるのを待ち、その状態に合わせて機能回復をはかるのが歯科治療だと思います。
「負担が大きすぎる」と悲鳴をあげている歯の声を聞かず、壊れた部品を取り除くように「この歯はダメだから抜いて、インプラントにしましょう」というのは医療ではありません。