こに歯学|歯科の記事

日本人の8割が歯周病というウソ

2017年11月16日

ネット上で日本人の8割が歯周病にかかっているという記載をよく見かけますが、これは本当のことでしょうか❓

歯石がついているだけでも歯周病としている

8割という数字の根拠となっているのは、平成17年の厚生労働省の歯科疾患実態調査です。

なぜこのように高い数値になったかというと、この調査では歯石が少しついている人も、歯肉に軽い炎症のある人も歯周病とカウントしてしまったからです。

つまり健康歯肉を持つ人が全体の2割で、それ以外の8割の人をすべて歯周病と言っているわけです。(下図)

そのことを、15~19歳の人たちに当てはめてみると、その人たちの7割近く、また、10~14歳でもほぼ半数が歯周病ということになっています。

たしかに歯石がついていたり出血があれば、健康な歯周組織とはいえませんが、この状態と通常問題になる歯周病”とはまったく違った状態です。

日本人の8割が、歯科治療の対象となるような歯周病に罹患しているわけではありません。

平成17年度歯科疾患実態調査のグラフ

平成17年歯科疾患実態調査(厚労省ホームページ)

http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-17.html

上の図で青く塗った部分(所見のない者)というのは歯石沈着も歯肉炎もない、まったくの健康な歯周組織の人です。

この青い部分を除いた人たちが健康な歯周組織をもたない歯周病の人とされてしまったわけです。

確かに20歳以上の人では、青いところ以外は8割くらいになりそうです。

しかし、20歳以上の人の棒グラフで一番広い面積を占めているのは白地に黒い点の“歯石の沈着”で、次が(歯周ポケットの存在しない)プロービング後の出血、つまり歯肉炎です。

一般に子供から老人まで多くの人に歯石はついていますし、疲労が蓄積したり寝不足が続けば歯肉が多少腫れてしまうこともあります。

それらの人もすべて歯周病ということにしているので、8割というとんでもない数値が出てきてしまったわけです。

成人の8割が歯周病なら、小中学生の半分も歯周病

この表の5歳から14歳の棒グラフを見てみると、子供たちの多くに歯石沈着と歯肉の出血が認められることに気がつきます。

つまり小学生と中学生の5割近くが歯周病に侵されていることになってしまいます。

また、15歳から19歳の6割以上も歯周病ということになってしまいます。

さらに5歳から9歳の乳歯列の子供の2割弱も歯周病ということになります。

20歳未満の若年者が放っておくと抜けてしまうような歯周病に罹患しているわけではないことは常識的に考えても理解できると思います。

日本人の8割に歯周病があるといっても、軽度の歯肉炎があるとか、歯石がついているなどの人が含まれた数字です。

歯周病で問題になるのは、歯周支持組織の破壊を伴う歯周炎(periodontitis)で、歯肉炎(gingivitis)や歯石沈着症とははっきり区別されています。

ところが、日本では歯周炎と歯肉炎をはっきり区別せずに、歯周組織に異常があるとすべて歯周病としてしまっているところにこの問題があるように思います。

「8割が歯周病」と言うときの「歯周病」は、歯が抜け落ちてしまったり、全身疾患と関連したりする重度の歯周炎とはまったく別物であることを知っておいてください。

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